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はじめてのお茶会で慌てない、やさしいマナー基礎知識

2023.08.02

お茶会は和装じゃなくてもOK!

「突然お茶会に招かれたけどどうしよう…」「いつかお茶会に参加してみたい!」という方に、これだけ押さえておけば心の焦りを和らげられる、お茶会のマナーを紹介します。

 “茶道=着物”というイメージですが、お茶会の服装は絶対に和服でなければという決まりはありません。ワンピースやスーツなど“少しよそゆき”をイメージすれば洋服で大丈夫。女性のスカートは膝丈まであるのが望ましく、露出の多い服装は避けましょう。男性は黒か紺の無地のスーツが最適。ネクタイも落ち着いた色のものを選びましょう。靴はプレーンな黒のパンプスや革靴がおすすめです。

別の靴下か足袋を持参しましょう

男女共通のマナーとして、結婚指輪も含めアクセサリーや腕時計は茶室へ入る前に外しておきましょう。これはお道具を傷つける可能性があるためです。また、清潔な白足袋または靴下を持参し、席に入る前に履き替えることもお茶席では必須です。

女性は口紅がお茶碗についてしまうので、メイクは濃くせずナチュラルに。派手なネイルもできれば避けましょう。香水もお茶の香りに影響を与えるので、控えるよう心がけましょう。

基本の持ち物は3つあれば安心

茶会に客として参加する際に必要な持ち物は、本来7つあります。「扇子※1」、「帛紗(ふくさ)」、「古帛紗(こぶくさ)※2」、「懐紙(かいし)」、「菓子切り(楊枝)」、「楊枝入れ」、「帛紗ばさみ※3」の7つです。突然のお茶会の場合は全て揃えることは難しいため、「扇子」、「懐紙」、「菓子切り(楊枝)」の3つあれば安心です。いずれも茶道具のお店や、百貨店、インターネットでも購入できます。

※1 扇いで涼をとるための扇子ではなく、挨拶をする際などに自身の前に置くもので、専用のものが販売されています

※2 古帛紗:濃茶を飲むときや、道具を拝見するときなどに使用する小型の布

※3 帛紗ばさみ:帛紗や扇子、楊枝や懐紙など茶道に必要な道具を収納して使う袋

茶室に入るときの大事な心得

亭主が心をこめて用意した道具などに対して、敬意をもってふるまい、よく見て、自分なりに好きな点を見つけることが大切です。茶室に入ることを「席入(せきいり)」と言いますが、席入したらまず床の間に向かい、その前で正座し、一礼して床の間の掛軸、花と花入を拝見します。初心者向けのお茶会では拝見は行わないことも多いので、亭主の案内に従いましょう。困ったら、周りの方に聞いてみたり、周囲の人の真似をすれば大丈夫。敷居や畳の縁は踏まないように注意しながら静かに歩きましょう。退席時も同様です。

お菓子のいただき方

お菓子は、お茶を飲む前にいただきます。お茶を飲みながら食べたい気持ちがあると思いますが、目の前のこと一つずつに向き合うために、お菓子を食べきってから、お茶を待ちます。菓子器に盛られたお菓子が順番に周ってきますので、ひとつずつ懐紙の上に取ります(懐紙はばらさず、束のまま使います)。頂く際は、懐紙ごとお菓子を取り上げ、生菓子(重量のある菓子)は菓子切りで、干菓子は手で頂きます。コロナ禍になってからは取り回しをせず、1名ずつ提供されることも多くなっています。亭主から「お菓子をどうぞ」と声がけがあってから、食べ始めましょう。

お茶の飲み方

茶碗が自分の前に置かれたら、一礼します。まずは右手で茶碗を取り、先にお茶が出された客と自分との間に置き、「お相伴いたします」、次に反対の客と自分との間に置き、「お先に頂戴いたします」と挨拶をします。そして自身の正面に茶碗を置き、「お点前頂戴いたします」と言い、一礼の後、左手の平に茶碗をのせ、少し持ち上げて頭を下げます。

茶碗を時計回りに90度×2回、回します。これは茶碗の正面を外してお茶を頂くためです。さて、ようやくお茶を飲めます。茶碗に口を近づけるのではなく、茶碗を口に寄せていきます。背筋を伸ばし、味、香り、温度など、お茶を飲む体験すべてに気持ちを向けます。いちどきに飲み干すのではなく、数回に分けてゆっくり飲みましょう。飲み終わったら茶碗の飲み口を指でぬぐい、指は懐紙で拭きます。その後、お茶を頂いた茶碗を手元でゆっくり鑑賞するのも、お茶の楽しみです。

「一期一会」の場を楽しむ気持ちが大事

お茶席の中で、その日その時の客と亭主が出会うのは一度きりです。仮に翌日、同じメンバーでお茶をしたとしても、同じ会にはなりません。そのことを、茶道では「一期一会」と呼びます。お茶会は、そんな一度きりの瞬間においてお茶を楽しみ、そこに居合わせた人たちと心のつながりを感じることが目的です。作法通りに間違いなく行うことが目的ではありません。最初は「ルールが多いな…」と感じられるかもしれませんが、それらは亭主と客がお互いを敬い、その場・その時を楽しむという目的を達成するために作られたもの。「一期一会」の場を楽しむ気持ちでお茶会に参加してみてください。

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