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煎茶と抹茶は心身をリセットしてくれるお守り

2023.08.02

お茶を淹れる時間を大切にする

忙しくて気持ちが落ち着かない日や心が落ち込んでいる時は、自分のためにお茶を淹れて一服すると良い気分転換になります。手軽なペットボトルやティーバッグが主流になり、急須でお茶を淹れる機会が少なくなりつつありますが、器を温め、適切な温度で丁寧に淹れたお茶を飲む時間は、疲れた心を落ち着けてくれるものです。

千利休の言葉とされるものに、「茶の湯とは、ただ湯を沸かし、茶を点てて、飲むばかりなるものとこそ知れ」というものがあります。湯を沸かし、茶葉を急須に入れ、急須から茶碗に注ぐ。ただそのことだけに向き合う。それは目の前で一瞬一瞬に起こっていること、生まれる感情をよく観察する、禅の姿勢に通じます。

他に何をするともなく、それだけのことに向き合い丁寧に淹れたお茶が美味しいのは、その過程で些細なことに気がつき、茶葉の様子や湯の温度など、様々なことに気がつけるようになるからです。

煎茶と抹茶の製法と味の違い

煎茶、抹茶、紅茶、烏龍茶と、お茶には様々な種類がありますが、いずれも植物の分類としては同じもの(チャノキ)から作られます。その中でも様々な品種が存在し、それぞれどのような茶に向くかが異なります。

ここでは、煎茶と抹茶の製法と味の違いをご説明しましょう。

煎茶は、茶葉を蒸した後、何段階にも分けて茶葉を揉みながら乾燥させ、茶葉の形を整えていくことで、最終的に針状によじれた形となります。この茶葉を揉む作業は、茶の組織を破壊して、茶のエキスを抽出しやすくするために行います。煎茶は茶のエキス分のみを飲むため、色は透き通った緑色で味わいは軽やかです。

抹茶は、茶葉を蒸してから乾かし、砕いたものを石臼で丁寧に挽いて粉にします。煎茶と違い、茶のエキスではなく、この茶葉の粉を湯に混ぜたものを飲むため、色は不透明な緑色となり、味はどっしりと重くなります。

煎茶は“淹れる”、抹茶は“点てる”

煎茶と抹茶では、それぞれ茶を用意する作業の名称が異なります。煎茶は”淹れる(いれる)”、抹茶は”点てる(たてる)”です。”淹れる”は「ひたす」の意味なので、茶葉を湯にひたしてエキスを抽出する作業を指すのは分かります。では、抹茶の”点てる”はどうでしょう。漢字からはちょっと想像できません。

今の抹茶につながる茶の飲み方は、鎌倉時代に日本に伝わりました。その頃の中国では、粉末にした茶葉を撹拌し、茶の表面に泡を立てて飲んでおり、この飲み方を”点茶”と呼びました。ここから字を取り、抹茶では「点」の字を用いるようになったのです。

手軽に抹茶を楽しむ「テーブル茶道」

抹茶はビタミンCがみかんの4倍以上も含まれているなど、うれしい栄養素が詰まっている「日本のスーパーフード」として世界でも注目を集めています。しかし、道具を揃えたり、お点前を覚えたりなど、お家で抹茶を飲むのはハードルが高いと感じるのが正直なところ…。しかし、お家で楽しむ分にはそう難しく考える必要はありません。抹茶は茶筅(ちゃせん)があれば手軽にお家でも楽しめます。湯を沸かし、茶碗(ご飯茶碗やカフェオレボウルでもOK!)にティースプーン軽く1杯の抹茶を入れ、少し冷ましたお湯を60〜70mlほど注いで茶筅で混ぜるだけ。抹茶を点てる様子は動画投稿サイトでもたくさんの方が投稿しているので、一度見てみるのもおすすめです。

煎茶を丁寧に淹れて心を休めたり、抹茶を手軽に取り入れて身体を労わる。日々の生活に煎茶と抹茶を取り入れて、心身をリセットしてみてはいかがでしょう。

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