小さい器は意外と深い、お茶碗の世界
茶碗はどのように生まれた?
茶碗は、実はそのすべてがお抹茶専用の器として生まれたわけではありません。
①お抹茶用につくられたもの
②お抹茶以外の用途につくられたもの
の2つが存在するのです。
②のように、本来の用途とは違うけれど、茶の湯に用いることを「見立て」といい、茶の湯のはじめの頃から使われたワザです。
ではどういったものが茶碗になったか、というと、有名なものでは井戸茶碗が挙げられます。
現在国宝に指定されている茶碗は8点あり、うち1点が井戸茶碗。京都の大徳寺・孤篷庵が所有する喜左衛門井戸(きざえもんいど)という名のついた茶碗です。
井戸茶碗は朝鮮半島でつくられた器です。現地においては、普段の生活に用いる、ご飯やお汁を盛る器だった、はたまた特別な儀礼の際に用いる祭器だった、などと言われています。
そういった茶碗を、茶人たちは自らの美意識に叶うものとして、取り上げていったのです。
見立ての茶碗
見立ては現代でも参考にできるワザです。
室町時代の茶人たちに比べ、今は世界中の情報に容易にアクセスできるようになりました。
そういう意味では、彼らより面白い見立ての茶碗をピックアップできるチャンスです。
海外旅行に出かけた際には是非、抹茶茶碗に使えるのでは?という目で露天や雑貨屋、地元の陶器屋や骨董屋の器を覗いてみてはいかがでしょうか。
思いがけないものが見つかるかも知れません。
使いやすい茶碗
とはいえ、どんな形の碗でも茶碗として使えるかというと、そういうわけではありません。
使いやすい茶碗の目安として、以下の特徴を挙げておきます。
・茶筅が振れる大きさ、形であること
・両手で持って心地よい大きさ、重さであること
・器の内側の底が尖っていたり、ぺたんと平たくないこと
・器の内側がザラザラしていないこと
・心地よく口をつけられること
・器を置いた時に安定すること
茶の湯に用いる茶碗として、と深く入っていくと、もっと細かい条件が求められますが、自身で抹茶を楽しむ分にはこの特徴を満たしていれば十分です。
茶碗を手に取る
見立ての茶碗を探したり、博物館で名品を鑑賞するのも楽しいですが、やはり茶碗は手に持つことでその味わいがわかるものです。触覚の情報量はあなどれません。
では、茶碗にたくさん触れるにはどうしたらよいでしょう?
一番確実なのは、茶碗を扱うギャラリーや骨董品店に出かけることです。
京都は茶道具や陶器を扱うギャラリー、骨董品店が数多くあります。それぞれ特色がありますので、事前にホームページやSNSで、そのお店の扱う作品が自分の好みに合うかどうかをチェックしてみましょう。
そういったお店では壊れ物を扱っているので、できるだけ大きなリュックやたくさんの荷物を持って行かないようにしましょう。うっかりぶつかる可能性があるためです。
そしてお店に行った際、気になる茶碗があれば、お店の方に一言、「手に持っていいでしょうか?」と尋ねてみてください。多くはどうぞ、と答えてくださるはずです。
実際に手に取ってみる際には、以下のことに気を付けてください。
・指輪などのアクセサリーを外すこと
・両手でもつこと
・高く持ち上げないこと
・ゆっくり動かすこと
以上を守れば大丈夫です。
こういった配慮をすることで、お店の方も「この人には色々触ってもらって大丈夫だな」と快く対応してくれるはずです。
©2023 陶々舎 中山福太朗