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茶室の床の間に自然の風情を飾る「茶花」

2023.09.06

「茶花」と「生け花」の考え方は対照的

茶室の床の間に飾る花を「茶花(ちゃばな)」と言います。茶室において主客を除けば唯一の命あるものが「茶花」です。

「茶花」と「生け花」は混同されることがありますがその目的や表現方法が異なります。千利休の言葉とされるものに「花は野にあるように」というものがありますが、「茶花」は生命のうつろう姿を茶室に取り込むもの。「花を生ける」でなはく、「花を入れる」といい、花器のことを「花入(はないれ)」と呼びます。

それに対して「生け花」は、植物を用いて作られた「作品」です。流派によっても異なりますが、技巧的な側面が大きく、伝統的な型が存在します。

「茶花」には型がなく、そのため花を止めるための道具(剣山、こみ藁)を使わないのも特徴です。「生け花」とは見せ方や考え方が異なるのです。

「茶花」にも“不完全の美”を

茶花によく使われる椿などは、満開の状態ではなく、これから咲こうとする蕾や少し開きかけた花が好んで使われます。花の種類や本数は少なく、籠などの花入を除けば多くても3種くらいまでとし、本数や葉の数は奇数にすることが基本です。下記は季節の花の一例になります。フラワーアレンジメントのような華やかなお花とはまた違った雰囲気を楽しみたい、という時に参考にされてみてはいかがでしょうか。

【茶花に使われる季節の花の一例】

春…椿(ツバキ)、梅(ウメ)、菜の花、黒文字(クロモジ)

夏…紫陽花(アジサイ)、花菖蒲(ハナショウブ)、槿(ムクゲ)、朝顔

秋…桔梗(キキョウ)、野菊、竜胆(リンドウ)、秋桜(コスモス)

冬…椿(ツバキ)、水仙(スイセン)、木瓜(ボケ)、蝋梅(ロウバイ)、南天(ナンテン)

造形美を追求するなら「華道」

花への興味が膨らみ、もっと深く花と向き合いたい方は「華道」を学ぶのもおすすめです。華道は花を生けることで、その美しさや命の尊さを表現する日本の伝統文化。四季折々の花や草木などの花材を花器に美しく生けます。花材がない空間にも美しさを見出し、線の美しさを表現することに重きを置くのも特徴の一つです。

華道にはいくつもの流派がありますが、花材を主役、準主役、脇役に分担させるという点はどの流派にも共通しています。

花の姿には流派ごとにスタイルがあるため、どの流派の花や教え方が好きか、体験レッスンに参加してみるのもいいでしょう。

華道の花の型を学び、花を生けることで、線や空間におけるバランス感覚などが磨かれていきます。色とりどりの花に触れたり、他の人の作品を鑑賞したりするなかで、外の世界だけでなく、自身の内面についてもさまざまな気づきがあるはずです。そういった気づきは、日々の小さな幸せや喜びを大きくしてくれるでしょう。

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